平凡と球技大会

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ボールがゆっくり落ちてくる。 俺は軽く助走をつけてジャンプした。 スパアァンッ!! 「……え…い、今なにが起こった?」 「わ、わかんねぇ…けど、あの平凡がアタック打ったように見えた…」 ギャラリーも相手チームもきょとんとしている。 打った俺ですらきょとん顔。 「…っす、すっごぉい!カズハくん凄いよ!!」 「え、なに?どういうこと?」 「なにじゃないよぉ!今凄いアタック決めたじゃん!」 「あ、アタック?」 洗剤? …違うか。 俺の手をとってきゃっきゃと喜ぶ俺をバレーに誘った子。 名前は明塚 日和(アカツカ ヒヨリ)。 暖かみのある明るい茶髪に笑顔が特徴的な女の子みたいな男の子だ。 「ほんとは上手かったんだねぇ」 「いやいや、俺はほんとに球技は苦手で…」 「なに言ってるの!全然苦手なんかじゃないでしょ!あんなバレー部でも打てないようなアタック打ったんだから」 心なしか、バレー部の人たちの表情が悲しげに…。 「カズハくんの方がバレー部の部員より上手いよ!上達するのだって早かったし」 あ、泣きそう…。 その辺でやめといてあげて! 「バレー部って言ったってこの人たち役に立たないもん!」 ああ…泣いちゃった。 「……俺たちだって精一杯やってるのに…」 「…気にすんなよ」 座り込んでのの字を床に書く部員たち。 …なんか、ごめんなさい。
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