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すっかり戦意喪失してしまった相手チームにヒヨリは容赦なくボールを打ち込んだ。
そらぁもう、見た目からは考えられないような感じで。
…ちょっと…いや、かなり怖かった。
そんなこんなでいつの間にか勝ち続けてしまった俺たちは、最終戦を前に昼飯を食べていた。
「ねえねえ、カズハくん。もうあのアタックは打たないの?」
「…いや、だからあれはまぐれなんだってば」
「でも、まぐれで打てるようなものじゃなかったよ?…カズハくんって、何者?」
「何者もなにも……」
「──…俺の弟だよな?」
急に頭に重みを感じていれば、すぐに上から声が聞こえてきた。
「……兄貴、重い」
「あ?大丈夫大丈夫。お前なら耐えられるよ」
「そういう問題じゃないっ」
結構な体重をかけられて背が縮みそう。
「もう、退けったら」
「…っと、あぶねぇな。当たったらいてぇだろ」
「だったら乗せるなよ!」
重たいから退けようと手を振ったら怒られた。
なんて理不尽な…。
「……ほんとに兄弟なんだね。そんなに自然な先生初めて見た」
「あ?そうか?俺はいつも自然だと思うぜ」
「自然っていうか自由っていうか…いや、兄貴は普段適当すぎる」
「適当じゃねーよ。俺は真面目にやってあれなんだ」
「嘘つけ!」
ギャーギャー騒いでいたら、そこへ榎本さんがやってきた。
「おい、水森」
「んだよ」
「てめぇじゃねぇ。そっちだ」
「えっ、俺!?」
なぜが俺をご指名の榎本さん。
呼ばれたけれどどうすればいいのかわからずオロオロしていると腕を掴まれた。
そのままぐいぐい引っ張られる。
この人どこに行くの!?
後ろから兄貴とヒヨリの声が聞こえたが、榎本さんは気にもせず俺を引っ張ってその場を後にした。
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