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─不良Aside─
頭を殴ると雰囲気が変わった。
目の前の男がにこにこ笑う。
しかし、その口から出てくる言葉はその笑みには似合わないものだった。
「──…お前が邪魔だって」
怖い。
最初に見た時は、どこにでもいるようなただの平凡なやつだと思ってた。
でもそれは違う。
こいつは平凡そうなやつだけど、全然そんな人間じゃない。
俺たちみたいななんの変哲もないただの不良とは違って、平凡な面をしてるクセに過去は重たく辛いものなんだろう。
だって普通に生きた人間が、あんな言葉をかけられるか?
俺みたいなやつならともかく、こいつみたいのが受ける言葉じゃない。
しかも、それは血の繋がった兄貴からなんだろ?
…ありえない。
目の前のこの平凡な男が、とてつもなく怖い。
関わりたくない気持ちが俺の中で大きく膨れ上がる。
ああ…俺はなんてやつに喧嘩をふっかけちまったんだ…。
「ふふふ…あははっ!」
そいつはくるくると回りながら笑う。
それがいきなりぴたりと止まって俺を見た。
動けない俺に笑顔を向けて、そいつは気を失ったのか崩れるように倒れる。
それから俺たちは、しばらく動くことが出来なかった。
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