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ゆっくりと俺を掴んだままその人は歩く。
おーろーしーてー…。
「…………」
しかも相変わらず無言。
せめてなんか喋ってくれ。
言葉のキャッチボールをしよう。
コミュニケーションは大事よ!
「……あの」
「………」
「喋ってもらわないとわからないんですが…」
「………」
…ダメか。
俺はどうしたらいいの!
相手の意図はわからないし、首はだんだん痛くなるし。
大した抵抗もできずにぶら下がっていれば、後ろの方からなんだか久々に聞くような声がして。
でもそれはきっと俺の会いたくないやつで。
振り向いて確認することもできないが、そいつが近づいてくるのが声でわかる。
逃げたい。
今すぐ逃げたい。
「おい!待てよ!」
…三村である。
嫌だあぁぁ!!
「…あれっ?お前カズハか?そうだよな!」
「…ソウデスネ」
「なんだよ敬語なんか使ってさ!!友達なんだからそんなもん使うなよな!」
ああっ…めんどくさい!
友達じゃないっつーのっ!
「なあなあ、なんでカズハは柚子(ユズ)に掴まれてんだ?」
「知らない…」
柚子…たぶん話からして俺を掴んでる人。
…え、三村知り合い?
「あのさ、知り合いなら放すように言ってくれない?…その、柚子って人に」
「あ?ああ、いいぜ!」
やった…やっと下ろしてもらえる…!
「…その代わり」
「え?」
条件付きですか?
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