1.淡桃色

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隣の家に住む、いとこの深谷藍斗(ミタニ アイト)を起こす。 もう体に染み付いた日課のようになってしまったこの行為は、私、宗方希紅(ムナカタ キベニ)と藍斗が中学に入ってから始まった。 思えばもう、四年も続けている。 我ながらすごい継続力だと思う…うん。 当然ながら、声をかけた相手である藍斗の部屋の窓を見つめて彼からの反応を待った。 だけど、いつもならすぐに返ってくるハズのおはようという一言が、中々窓の中から飛び出てこない。 なにあの低血圧、まだ寝てんの!? 私の中にふつりと湧いて出た苛立ちは体内に留まるには重すぎるから、また深呼吸して気を落ち着かせよう試みてみた。 イライラするな、私。 そう自分に言い聞かせてみたものの、やっぱり藍斗が起きてこないのは困る。 だって遅刻っていう最悪な結果に落ちるかもしれないんだもん。 私、今学期は遅刻0目指してんだから。 それで先生から見直されるんだから! だから、初っ端からその記録を台無しにするわけにはいかない。 _
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