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7月も下旬のある日、日本の中央あたりの某市で、ボクは空を見上げながら歩いていた。
「…雲量だいたい1、本日も快晴なり…か」
ボクは、そう呟いてから携帯を取り出し、ネットに繋いで天気図を確認する。
「…まだ太平洋高気圧が居座ってやがる。早く引っ込めよ」
小さな画面の中の日本列島は、鯨の尻尾みたいな形の等圧線に囲まれている。
「夏の典型的な気圧配置……
まったく、いつの間にこんな言葉がスラスラと出てくる様になったのやら…」
と、自分でも気が付かない間の変化を嘆いていると…
「私が教えたのだから、コレくらい当然よ」
ボクの隣に、1人の少女が並んできた。
「そうだったな…たった1ヶ月前は幸せにPCやってたのに……」
「透、よかったじゃない。あのままだったら、アンタ確実にニートになってたわよ?」
そうキツい口調で言うのは世良 由野(せら ゆの)。
残念な事にボクの幼なじみだ。
「別にボクが幸せなら問題ないんだよ」
「あっそ。ま、今はウチの社員だから、しっかり働きなさいよ?」
「まだバイトだっての…既に決定事項かよ」
実は、ボクと由野は、とある会社で働いている。
会社と言っても、ボク達以外には社長しか居ないという零細企業だが…
「それより透、社長から連絡よ」
と、由野が自分の携帯をボクに見せてくる。
「またメールか……
なるほど、これから台風が発生するって事か?」
「そう。そして、直撃するわよ」
「ココにか?確率は?」
「今のところ…96.7%ね」
由野が、メールで送られてきた情報を読み上げる。
「よくもまぁ、そんな正確に予想できるよな…」
「プログラムを作ったのは透でしょ?」
そうだった………
ボクが、全く興味のなかった気象に関わるなんて、予想さえしてなかった。
だいたい1ヶ月前の、アレまでは………
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