第1話 梅雨時の台風は危ない

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「……大型で強い台風4号は、勢力を保ったまま北北東に……」 付けっ放しのテレビから流れるニュースと、雨粒と風が窓を叩く音をBGMにして、ボクはPCに向かっていた。 今は6月の下旬、梅雨の季節だ。 「それにしても、台風か……」 と、テレビをチラッと見てボクは言う。 ボクの名前は木島 透(きじま とおる)。 自分では、普通の高校2年生だと思ってる。 テレビに映し出された日本地図には、ほぼ中央に赤と黄色の円で暴風域と強風域が示されている。 ちなみに、ボクが住んでる籠居市という都市は、赤い円の中にある。 もう一度、テレビの画面を見ると、上の方に「避難勧告 籠居市」とテロップで表示された。 「なんか避難勧告が出てるみたいだけど… ま、大丈夫だろ」 ボクはそう判断して、テレビの電源を切る。 普通なら、こんな場合には親が避難を決定するのだろうが、ボクの両親は家には居ない。 それどころか、日本には居ない。 地元の大学で研究をしていた両親は、半年ほど前、アメリカの何処かの大学に呼ばれたそうだ。 それで、ボクだけが家に残された。 最初は家事に苦労したけど、今は慣れた。 「…さて、続きをやろうかな」 ボクは再び、PCに向かう。 画面には、幾つものコマンドが表示されている。 「えっと…この部分は……」 そこに、ブラインドタッチで新たな文字列を加えていく。 今作っているのは、実は違法なモノだったりする。 つまり、コンピュータウイルス。 しかもハッキング用だ。 ボクの趣味は、腕試しに国家機関などにハッキングする事。 情報を盗んだりはしないけど、ペンタゴンとか防衛省とかに侵入した事もある。 もちろん、この事は誰も知らない。 学校の仲間からは、無口で陰が薄いヤツだと思われてるだろうな。
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