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私は否定したくて、大袈裟なくらい首を横に振った。
「そんなことしてませんっ…。」
「それじゃ、どうして俺?」
うっ…。
どうしてって…。
見下ろす佐伯先生の瞳から、逃げるように視線を泳がせた。
「…やっぱり他の先生にも言ってるんだ?」
「い、言ってません!佐伯先生にしか…。」
「俺にしか、ね…。どうして?」
先生はトンと壁に片手をついて、体を傾けた。
微妙に楽しそうに見えるのは、気のせいじゃないと思う。
意地悪な笑い、…してるよね、先生。
「松谷…。理由、聞いてるんだけど。」
先生は私の耳元に唇を寄せ、息がかかるように色っぽく囁いた。
その瞬間ザワリとくすぐったいような、苦しいような感覚が襲い、思わず首をすぼめてしまう。
佐伯先生はそんな私にさらにフーッと息を吹いた。
「すっ…好き……だからっ…。」
勢い余って思わず口にした想いに俯いた。
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