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急に口籠る先生はきっと、去年のことを思い出してるに違いない。 あのとき、先生が来てくれてなかったらと思うと、今でもゾッとしてしまう。 「…わかりました。」 あんな現場を目撃した佐伯先生だってきっと、ショックだったと思うから、私は素直に頷いた。 『うん。よし、じゃ、ちゃんと宿題やって早めに寝ろよ。』 先生はあっさりと教師らしいことを言い出す。 …いや、教師なんだけど。 その微妙な壁が少し寂しいと思うのは、欲張りなんだろうか…。 昨日までこうしてプライベートの先生と話すことすら叶わなかったのだから、今はこの距離感で満足するべきだよね。 「はい。おやすみなさい。」 パタンと携帯を閉じた。
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