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足を止め、結衣と顔を見合わせていると、
「ちょっと、いいですか?」
周囲が言う岸田さんに呼び出されてしまった。
「志歩、私パン買ったら教室戻ってるから。」
笑顔で送り出そうとする結衣を、追い縋るように見つめたけれど、手を振りさっさと行ってしまった。
着いていく選択肢しか残されなくなった私は、渋々彼の後を追った。
彼の後ろを付いていく形となった私は好奇の視線に晒され、時には女子の痛烈な視線を浴びながら、中庭へと通じるドアから外へ出た。
中庭へと出ると心地良く吹き抜ける風が、暑さを和らげてくれる。
昼休みのせいか、ベンチに腰かけてお弁当を広げる生徒も少なくない中、端の人目に付きにくい場所まで行くと、岸田さんがくるりとこちらに体を向けた。
「うわっ…!」
突然、動きを止められ急ぎ足だった私は、急に止まることができずに、身体を後ろに引いて尻もちを付きそうになった腕を、岸田さんの腕が素早く引き寄せた。
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