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私をすっぽりと両手で包み込んでくれる優しい腕の中で、目を閉じて夢じゃないんだと実感する。
「松谷…たぶん卒業するまで、言うつもりないから、よく聞いて。」
「…え?」
抱き締めていた腕を緩めて、私の目を覗き込む佐伯先生の真剣な瞳。
「お前のこと、好きだよ。」
「……。」
「何とか言って欲しいんだけど。」
「…あ…。はい…えっと…。」
何をどう言ったらいいのか、…頭が真っ白。
そんな私を見て先生はプッと吹き出した。
「じゃ、後は卒業したら、な。」
「えっ…?ええ!?」
「なに?」
なにって、そんなの酷すぎる。もっといっぱい聞きたいのに。
せ、せめて…
「もう一回…」
「ヤダ。」
予想通りの返事に、がっくりと項垂れた。
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