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優しく静かに伝わる佐伯先生の温もり。
「顔、見せて。」
「…イヤ、です。」
「どうして?」
「恥ずかしいから…。」
ふっと笑う息遣いが聞こえて、
「見たいんだけど、照れた松谷。」
意地悪な声が響くから、もう…。
余計に顔が熱くなった。
「松谷、さっき言ってた気持ちは、人を好きになったら、誰でも思うものだよ。
だから、恥ずかしがることでも、卑下することでもない。」
──え?
「本当に?」
「うん。」
「…それじゃ…先生、も?
先生も私にそんなこと思ってるんですか?」
頬に置かれた先生の手に手を重ねた。
どうしても知りたくて。
一度だけ佐伯先生の気持ちを聞かされた。
でもそれきりもう聞かされることはなかった。
だから…。
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