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「っ…!センセ…」 「動くと痛いよ。…血も出るし。」 掴んだ手にそっと力をこめて、逃がさないとばかりに動きを封じられる。 「松谷…怖いなら、目閉じてろよ。」 色っぽく囁いて、意地悪に目を細め、笑うのは佐伯先生。 本名、佐伯翔太。 25歳、独身、無駄にカッコいい男…数学教師。 私のクラス、2-Aの副担。 「…痛っ!!」 「だから動くなって言ってるだろ? 力抜いて、楽にしてろ。俺を信じて…」 低く甘い囁きが、鼓膜をくすぐって、私は身動きができなくなった…。 神経全部を先生に向けているみたいになって、身体中が熱くなる。 羞恥心が襲い、息ができない…。 触れられる指先が移動するたびに、その場所が次々と熱を帯びていく。 思わず呼吸を乱すと、先生が私を見上げた。 「クスクス…そんな悩ましい顔するなよ。」 からかうように笑う彼を、睨み付けた。 けれど、抗議の言葉がまるで出てこない情けない私…。
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