588人が本棚に入れています
本棚に追加
「後悔、させるつもりはないけど、…たとえこの恋が、どういう結果になるにしろ、お前にはいい恋だったと思えるようにしたいな。」
先生…。
甘ったれで子どもの私に、そんな言葉もったいないよ。
「それが、今の俺の願いかな。」
「だったら先生…その願いはもう、叶ってますよ。
後悔もしてないし、いい恋だって思ってます。」
「今はね。感情が高ぶってるときは、誰でもそう思うものだよ。
そうじゃなくて……何年か先に自分を振り返る日がきたとき、そのときの想いに懐かしさと一緒に、今感じてる鼓動や高鳴りを思い出せるくらいの、そんな恋であればいいと思う。」
抱き締め返す腕の力が強まると、佐伯先生の想いの切なさまで伝わってくるみたいだった。
「…先生…私たちの恋は、誰にも言えないけど…。
でも今のこの気持ちは、胸を張って誇れます。
先生を好きになれたこと。」
「松谷…。」
この腕の温かさも、香りも、優しさも、すべてと引き換えにしてくれようとしてる先生の気持ちも、絶対忘れないから。
最初のコメントを投稿しよう!