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驚きのあまり、つままれている口からは当然声は出せないけれど、目を見開いて、何度も瞬きをしてしまう。 ひょいと手を離されても、先生の温もりが残っている口元に手を当てた。 「今のは、岸田に対する懺悔だから、気にするな。 ほら…偶然とはいえ告白聞いちゃったわけだし。 俺はお前の流されない一途なとこ、良いと思うよ。」 優しく微笑む先生を見て、私は顔を赤くした。 さっきまでの悲しい感情が嘘のように、最後のひとことで吹き飛んでしまう。 「美人でモテるのに、そういうのを鼻にかけないで、慎ましく生きてるとことか、健気に委員の仕事してるとことか、な。」 「先生っ…。」 少し大きな声で呼ぶと、佐伯先生は目を丸くした。
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