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††
放課後、私と川端君は約束通り教室に残って、宣伝用のあらすじを考えていた。
「松谷は気に入ってる文章ないの?」
本を渡され期待の籠った瞳で私を見つめる。
パラパラっとページを捲り、手を止めた。
「…ここ、かな?」
指を差し本を渡すと、
「"君を愛しく思うあまり、僕は君の心を砕いてしまう。"か…。
うん、悪くないな。
この前のとこれを元にあらすじ考えていこう。」
彼が読み上げた。
「うん。」
ひとつの机で向かい合うように座って、私たちは夢中になっていた。
「…もう、こんな時間か。
続きはまたにしようか。」
「うん、そうだね。
明日は私が当番だから、明後日でいい?」
「うん。」
そう約束をして、片付けを始めた。
「あのさ、松谷…もう遅いし、送って─…」
川端君が言いかけたとき、カラカラっと引き戸が開けられた。
「なんだ、お前らまだ残ってたの?」
目を向けると、佐伯先生がいるから、だらしなく顔が緩みそうになる。
「あ、はい。
この前の委員会のあらすじをやってたんです。」
川端君が説明すると先生は頷いて、
「今日はもう終わったの?
下校時間だから、早めに出ないと鍵かけらるよ。」
と先生に言われ、鞄を持ち、振り返る川端君は、きっと私に急ぐよう促しているんだとわかった。
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