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見つめて、息を呑む── 身体が動かない。 時も、心も、すべて奪われたみたいに─… スッと先生の手が下ろされた。 名残惜しい温もりが消える瞬間は、いつまで経っても慣れることはなくて、寂しく思う。 「そんな顔されると、誘ってるってとるよ?」 「…え?」 いつか佐伯先生が言った言葉が蘇る。 懐かしさが胸に込み上げて、笑みを溢して見上げた。 ふわりと微笑む先生の悪戯な瞳は、少年のようで。 「松谷、準備はいい?」 私の手元──つまり鞄を指で差し、尋ねられた。 「あ…はい。」 こんな所で私は何を期待してるの… 教室なんて、絶対見られてるに決まっている。 ──いつも見ているよ。 あの手紙が頭を過る。 「松谷、大丈夫か?」 心配そうに覗き込まれ、慌てて肩を弾ませた。 小さく頷くと、 「それじゃ、行こうか。」 そう言って、先生は引き戸に向かった。 ドアに手を掛けたまま、私が出るのを待っていてくれる。
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