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足を進めながら見つめ合っていると、角を曲がったところで、
「お、松谷!」
少し離れた所から、声をかけられ、視線をそちらに向ける。
「…真柴先生、こんにちは。」
「おお、こんにちはって、あれ?佐伯先生も一緒だったんだ?」
私より少し遅れて曲がった先生の姿を捉えると、真柴先生は少し驚いた様子だった。
「こんにちは、真柴先生。部活途中ですか?」
「うん。ああ、そうか。
今日は秋山先生が休みだから、佐伯先生が見回り?」
「ええ。」
3人で階段を下りながら、他愛もない話をしている。
先生同士の話なんて滅多に聞けないから、ちょっとわくわくしてしまう。
「ところで松谷、お前陸上部の件考えてくれたか?」
…うっ…出た。
「先生、もう夏ですよ?
これから入部したって遅いじゃないですか?」
だから諦めて、という願いを込めて言ってみる。
「そんなのまだ間に合うぞ。
いいか、お前の脚力なら即戦力になるから、俺はめちゃめちゃ期待してる。」
「…なに?松谷、真柴先生にスカウトされてたの?」
不思議そうに私を見て、心底驚いたような顔をしている佐伯先生。
「そうなんだよ。この前から一生懸命口説いてるのに、なかなか良い返事がもらえなくてさ。
先生からもプッシュしてくれよ。」
「お前が足速いなんて…というか、運動神経が良いなんて知らなかった。」
佐伯先生は意外とでも言いたいのか目を丸くした。
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