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すっかり浸っていると、結衣は呆れたような視線をよこし、私のお弁当箱から卵焼きを指でつまんで、口の中に放り込んだ。
「美味い。…まあ、志歩の可愛さから完全に実らない恋とは言わないけどね。
でも、勿体無いよね、岸田先輩は。私なら二つ返事でOKしちゃうけど。」
「金やんに言い付けちゃうよ。」
金やんこと、金子俊樹君は隣りのクラス、2-Bにいる結衣の彼氏だ。
超仲良しのこの二人を見てると、同年代の男の子と、普通に恋をして放課後一緒に帰って、何も気にしないで好きって言い合えることに、確かに憧れてしまう。
「俊樹はそんなことじゃ怒らないよ。」
勝ち誇った目で私を見つめる彼女に、その信頼関係が羨ましいとさえ思う。
「はいはい。ご馳走様でした。見せつけないでよね。」
なんてからかってみたり。
「楽しいよー、同じ歳の彼氏。佐伯先生より、何倍も。」
意地悪な笑いを浮かべた結衣。
どうやら逆襲に遭ってしまったらしい…。
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