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「誘ってんの?」
「……」
「フッ…沈黙は、肯定って知らないのか?」
悪戯に笑う先生は、ときどき幼く見える。
そこがまた、ツボだったりするんだけど。
「松谷、顔…赤いけど。」
そう指摘されると、見られたくなくて俯いた。
ただでさえこの二人きりの空間というシチュエーションに、緊張しているのだから、そんな風に恥ずかしくなるようなことを、言葉にしないでほしい。
たぶん、意地悪して楽しんでいるに違いない。
「じゃ、もう一度やるぞ。…目、閉じて。」
照れている私を置き去りにして、先生はまた手を握りしめた。
肘から手首にかけて筋張る腕は、女の私のものとは全然違って見惚れてしまう。
大きな手が私の手を容易く包み込むと、高鳴る鼓動を抑え切れなくなる。
温かな感触に恐怖心が薄らいでいって、私は言われるままゆっくりと目を閉じた。
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