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……一段は折ってるけどね。 結衣の作戦、若さを見せつける大作戦──惜しみなく脚を出すこと、らしい。 白くて細い悩まし気な太股と言われたから、これはある意味成功したのかもしれない…。 先生がカウンターの方へと行き椅子に腰かけるから、私も先程自分が座っていた場所へと座り、本の修復の続きをやり始めた。 「手伝おうか?」 「大丈夫です。」 そう答えると、先生は手近にあった本を取り読み始めた。 静かな空間で、私の本を捲る音とテープを切る音、…それから先生の手元から頁を捲る紙が擦れる音が響いている。 毎週この静けさの中に佐伯先生と二人きりでいることに、未だ慣れることもなく緊張する。 全然近い距離にいないのに、先生の温度が私にまで伝わっているような錯覚さえ起こし、先生のいる左側だけ温かく感じさせた。 1冊の補修が終わり、パラパラと捲ってみる。
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