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思い詰めた表情を無理矢理誤魔化すように、佐伯先生はフッと笑った。
「怖かったよな。…気を付けて帰れよ。
家の中に入るまでここで見てるから、安心して。」
別れの時間。
そうだよね、先生は見回りの途中だもんね。
私はシートベルトを外し、ドアに手をかけた。
けれどどうしても先程の佐伯先生の表情が気になって、もう一度先生に顔を向けた。
「どうした?」
「…先生、私…。」
こういうとき、なんて声をかけたらいいのかな。
適切な言葉がなにも思い浮かばず、じっと先生を見つめてしまう。
「なにか、気になることでもあるのか?あの男と顔見知りとか?」
少し焦ったような口調で話す先生に、私は首を横に振った。
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