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佐伯先生は、私と向き合うように体を傾け、右手を伸ばしてきた。
ポンポンと頭を撫でて、
「心配してくれて、ありがとう。
…でも、お前は自分の心配だけしてればいい。俺は男で…まして、大人だからね。」
そう言って困った顔で小さく笑った。
大きくて優しい手に心を締め付けられる。
先生は大人で、私は子供で…。
頼りないことはわかってる。
でも、少しでいいから、先生の気持ちを軽くしてあげられたらなんて思ってしまう。
「…生意気なこと言って、すみません。」
私なんかじゃ到底、佐伯先生を癒してあげることはできない。
「松谷……そういうことじゃないよ。
教師として、生徒に慰められたら情けないだろ?
本音を言えばお前の言ったこと、図星だったから。」
「えっ?」
驚いて先生を見つめると、ぽりぽりと人指し指でこめかみをかいて、バツの悪そうな顔をした。
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