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「ほら、もう行け。」 佐伯先生はハンドルに腕を組んで顎を乗せ、目線だけを私によこした。 カッコいい…。 悔しいくらい、やっぱり大人だと感じてしまう。 切ない気持ちを胸に抱えたままドアを開け、 「先生、今日は本当にありがとうございました。 失礼します。」 もう一度お礼を言って、お辞儀した。 佐伯先生は約束通り、私が玄関の中に入るまでその場に留まってくれていた。 優しい…。 今日はいっぱい近付けたような気がして、ひとり浮かれてしまう。 憂いを含んだ瞳が、すごく綺麗で頭から離れない。 日を追うごとにどんどん気持ちが膨らんでいって、自分でも持て余してしまいそうになる。
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