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階段を上りながら結衣の愚痴を聞いていると、 「志歩ちゃん!」 名前を呼ばれて、辺りをキョロキョロ見渡した。 「上だよ。」 そう言われて見上げると、3階の手すりに掴まりながら、少し身体を乗り出して見下ろしている岸田先輩と目が合う。 「…こんにちは。」 「こんにちは。志歩ちゃんちょっと待ってて。」 挨拶をすると、優しく微笑みを浮かべて私に待っているように言った。 「志歩、先教室戻ってるね。」 「えっ…。」 「お邪魔虫は消えまーす。じゃーね。」 結衣はそう言って、階段を駆け上がって行った。 どうして、いつも取り残されてしまうんだろう…。 「ごめんね。」 「いえ。」 あっという間に現われた先輩は、さすが運動部という感じで、呼吸一つ乱れていない。 何気ないメールのやり取りを毎日しているせいもあって、最近ではこうして話すことも抵抗なく、緊張もしなくなったのだけれど…。
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