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階段の踊り場の隅に移動すると、岸田先輩がポケットを探り出した。
「あのさ、来週の土曜日、一緒に行かない?」
遊園地のペアチケットが目の前に差し出される…。
「ダメ、かな?」
「あ…いえ、そんなことは…。良いんですか?お友達とか誘わなくて。」
「ヤローと行ってもね。俺は志歩ちゃんと行きたい。」
す、ストレート過ぎる…。
少し照れたような顔をプラスされると、好きではないけれど、ちょっとだけ心臓が跳ねた。
結衣が騒いでるだけあって、やっぱりカッコいいよね、うん。
「予定ある?」
やばっ…完璧一人の世界に入ってた。
「いえ…。」
「じゃあ、OKってことで、時間とか後でメールするから。」
「はい。」
断れない自分の弱さを恨みたい…。
思わせぶりなことしないって決めたのに…。
結局岸田先輩からチケットの片割れを受け取り、嬉しそうに笑って3階へと戻る先輩の後姿を見送った。
あんな顔されたら、断れないし。
大きな溜め息を付いて、私は教室へと戻った。
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