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ひとり喜びに浮かれていると、佐伯先生は大きな溜め息をつき、見上げると口元を片手で覆い、複雑そうな表情をしていた。 「先生、どうかしたんですか?」 「…いや。まさか生徒に手を出すことになるなんて、思ってもみなかったから…。」 えっ!?手を出すって…。 「あのさ、松谷。」 「…はい。」 またこのシチュエーション!? もう引っ掛からないから、と自分に言い聞かせていると、佐伯先生が屈んで顔を近付けきた。 「お前だけだから。」 「は、はい?」 近いですっ…! 嬉しいけど、恥ずかしくて何も考えられなくなるんだってば。 「…生徒で、キスしたの。 そもそも、生徒とどうにかなるなんて、…俺の中でまったくあり得ないことだったんだからな。」 はぁ…と、もうひとつ溜め息を溢し、私と視線を合わせていた先生が、上目遣いで見つめてきた。
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