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「これはただの眼鏡じゃない」
はて、そう言われても……。
黒いフレームの優等生アイテムといわれる眼鏡しか見えない。
「学力を上げろと?」
「ちがーう」
「優等生になれと?」
「ちっがーう」
じゃあ何なんだよ!
何コレ、焦らしプレイ!?
自分の父にこんな得意技があったなんて後世の恥だ。
「これはだな……霊が見える眼鏡。そう、"霊眼鏡(れいがんきょう)"だ」
「霊眼……鏡?」
どうして霊が見える眼鏡なんて造ったのだろう。いくら考えても答えなんて見つからない。
だってその答えは目の前にいる、陽気な父が握ってるのだから。
「これは教授からの課題なんだよ。世の中を「あ!」と言わせる物を開発してみろってね」
「で、私がまず初めに試してみろと?」
「そだよ~」
軽く返事をしながら、父は自分の造った眼鏡を愛おしそうに見つめていた。
「んなら父さんが最初に掛けてみればいいじゃん」
そう言った時、ピタッと父は動きを止めた。
一気に顔面蒼白になり、ゆっくりと首を動かしながら私を見た。
「お前ね」
「……な、なに」
怒られるのか?
父親の頼みが聞けないのかなんとか、説教されるのか。
こんな事で。
「父さんが幽霊苦手なの知ってるだろぉぉぉ!!」
「知るかボケッ!んなの生まれて初めて聞いたわ!!」
的が外れた。
父は私が考えていた理由とは程遠く、単に自分が怖い経験をしたくないのだ。
それなら霊が見える眼鏡なんて造らなきゃいい事だけど。
「千春ぅ~。頼むよ~」
呆れた私は研究室から出ようとしたのだが、縋り付くように父が身体にしがみついてきた。
しがみつかれながらもズルズルと父を引きずりながら、一歩ずつ足を踏み込んでいく。
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