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それにしても、毎度同じ夢を見る事ってあるのだろうか。
しかも言葉も登場する人も全然自分とは関係のない二人。
(病気かな……)
同じ夢を何度も見ることに色々な精神関係の本を読んでも、満足出来る内容ではなかった。
母親に相談してみても「へぇ」の関心の無い一言。
「……魂の記憶」
「うひゃっ!!――って、澪じゃん」
私達の背後から気配を感じさせずに現れたのは、同じ園芸部で仲良くなった【森崎 澪(もりさき れい)】
ストレートの黒髪で、華奢な身体つきをしている。いつも唐突に現れるから、いつも驚いてばっかだ。
「た……魂の記憶?」
「うん」
「それって前世がどうのとかって話し?」
「うん」
舞と私は澪の気の抜けた返事に互いに顔を見合わせていた。
「記憶なんてあるわけないじゃん。あったら、私にだってあるって~」
前世とか幽霊とか非科学的な事を信じない舞は、ケラケラと澪の話しに腹を抱えて笑っている。
ちらっとそんな舞を見た澪は静かに溜め息を零す――。
「舞は薄っぺらい人生だったから、それ程……魂に刻まれなかったんだよ」
「おい。それは聞き捨てならねーぞ」
袖を捲るようにした舞に、澪はスーッとその場から逃げるようにどっかへ歩き出してしまう。
「澪ー!!」とジョウロを放り投げた舞は、園芸部の仕事を放棄して澪を追い掛けて行った。
「魂の……記憶、か」
色々な本を読んでもすんなり受け入れられなかったのに、何故か澪の言った言葉は素直に受け止められた。
花壇の前に立ち尽くす私は、ぎゅっ…と胸元を握り締めていたのだった――。
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