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女の子の名前は凪沙というらしい。
凪沙ちゃんはまず綿あめを食べたいと言った。
次にあのぬいぐるみが欲しいと言って僕に射的で取らせたあと、2人で焼きそばを食べ、最後に金魚すくいをした。
金魚は家で飼えないからあげる、と言われたので素直にもらった。ただ単にすくってみたかっただけなのだ、と凪沙ちゃんは笑った。
「そうだ、そろそろ帰らなきゃ」
凪沙ちゃんがそう言うので腕時計で確認すると、7時を回ったところだった。
「今日はいろいろ買ってくれてありがとう」
すっかり元気になった凪沙ちゃんは照れながらもお礼を言ってくれた。
手には先程のクマのぬいぐるみが抱かれている。
「また遊ぼうね。えっと……名前、なんていうの?」
凪沙ちゃんはちょっと首を傾げて僕に訊いた。
僕は嫌いな自分の名前を口にした。
「……光希……」
凪沙ちゃんはそうなんだーと頷いて、「じゃあね~」と手を振って駆けていった。
また僕は一人になった。
それでも僕は嬉しかった。
彼女は僕の名前に対して、何も言わなかった。
僕の名前を聞いた人は決まって「女の子みたいだね」と言うから。
この「光希」という名前は、僕の為に考えられた名前ではなく、本当は姉のものであったからーー。
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