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「・・・・ま、それもそうね。貴方からしてみれば、突然戦場にほうり込まれた・・・・言うなればリアルのバトルロワイアルってところ?」
もっとも私、あれ読んだことはないのだけど。
彼女はそう呟き、やっと僕から視線を外し、床と椅子が擦れる不快な音とともに体ごと横を向く。肩まで伸びた金髪が、風に揺られて綺麗になびいた。
「でもね、大事なことはそんな事ではないのよ? 本当に大事なことというものは、いつだって誰も気づかないようなところに存在しているものなのだわ」
どこか陶酔している様子で、ハルはこちらを見ずに話を続ける。
僕は答えない。それは、答える必要がないと感じたからか、彼女が語った言葉があまりにも陳腐だと思ったからか。
両方だよ。僕は心の中だけで呟き、ただ黙ってハルの綺麗な横顔を眺めた。
「よく聞きなさい。今の場合、大切なことは、過去への疑問じゃない。未来の想像よ」
言いながら彼女は、こちらへと向き直る。挑戦的な瞳と綺麗な金髪がまたこちらへと向けられ、僕はまた目を逸らした。
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