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中を開ける。
俺「っ」
少し後ろに飛んで距離をとった。
「何をしているんだい?」
俺「いや。中からチェーンソーを持った大男的な物体が出て来るんじゃないかと思ってな」
「はは。頭だいじょうぶ?」正常だ。お前よりは。
「奇怪な行動はいいからさ。中を確認してみなよ。面白いモノが見られるよっ」
眼を凝らして言われるまま中を確認する。そこには女性用。もしくは少女が着る様な衣服が乱雑に詰め込まれていた。物音がした割りに何かある気配はない。
俺「、、、散らかし放題ですね。ちゃんとハンガーにかけなきゃしわしわになるぞ。服の趣味も大層少女チックなフリフリばかりだ」
「それはお爺様の趣味。僕は着たくないんだけどね。毎年誕生日には大量に服が送られてくるんだ。まったく。迷惑な話しだよ」付け加える様に。はぁ、とため息が聴こえた。
俺「変態だな」
おっさんににゃにゃしながら少女物の服を着せるなんてな。想像しただけで鳥肌もんだ。
「変態だよ。お爺様はね。まぁ僕は変態じゃないけど」胸を張って言った様な鼻息。お前も十分変態だ。
このまま話していても埒があかない。警戒しつつ取り合えずクローゼットに近付いてみる。
俺「、、、」
ヒントがあるとするなら、この不自然に落ちている服の中か。何かを隠す様に敷き詰められている。
「もう一度スイッチを押してごらん」やけにスイッチを押させる事に拘るな。何か嫌な予感がする。
だけど俺に迷う選択肢は用意されていない。断って機嫌を悪くされても困るからな。これ以上にルール追加は心底勘弁願いたい。
俺「、、っ」
少しの間を置いて。ボタンを押した。
「ピッ」
「モゾモゾ」
俺「おわっ」
スイッチと同時に目の前にある服の塊が動いた。
「すぐに中を調べて!」少し強めに発され言葉は確実に命令口調だ。
俺「っ」
急な言葉に反応した事もあり、躊躇わずに服の中に手を突っ込んだ。
意外にも。重なった服は厚みがあり。ずぶずぶと腕が埋もれていく。
腕が吸い込まれた先に柔らかい何かが当たった。
俺「っ。何かあったっ」
「力を入れて掴んで!放さないように引っ張り出して!」間髪入れずの命令。少し楽しそうに声を弾ませている。何故だ?。
その疑問を考えるべくもなく。思えば。最初に気付くべきだったんだ。
何故あれほどスイッチを押させる事に拘ったのか。
こいつって人間が楽しいと思うのがどんな事か。
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