正義が悪に堕ちる時

16/22
前へ
/24ページ
次へ
「最後の辞世の句を無駄に使ったね。ブルーは戦えないよ。恐怖に支配されてる」 ひたすら震えながらスタンガンを鳴らすブルーを、イエローは嘲笑しながら言った。 「あんたはもう戦えないし、正義の味方の最強と最弱で仲良く逝きな。友達が居た方が楽しいだろ?」 そう言いながら、イエローは右手をレッドの頭に向けて振りかぶった。 彼の手首から先が光り、エネルギーを溜める。放電した電気が壁を灼きながら、更に光を放ち始めた。 必殺技だ。 「僕の必殺技が瞬殺系で良かったね、リーダー」 イエローは最後まで冷静な笑みを浮かべて、言った。 「雷神ingスラッシャー!!」 カッ!! と光が一瞬で部屋中を突き抜けた。物の有無も分からなくなる。ただひたすら、激しい放電音が地鳴りのように鳴り響いていた。 そして雷鳴が消えていく中、グリーンはイエローに話し掛ける為に一歩進もうとした。 当然レッドとブルーは消し炭になっているだろう。あとはこの会社を火事にでもして行方をくらませば…という相談を考えていたのだ。 だがしかし、残念ながら彼は足を止めた。 ゆっくりと消えていくイエローの光の中で、イエローに向かい合って二つの影がそこにいた。 「…チッ、ブルー…。貴様…」 イエローの珍しく苦々しい声を聞いて、やっと何が起きているのか、グリーンにも理解が出来た。 二人の格好は確かに焦げて黒くなって居るが、その形は変わっていない。いやむしろ、レッドに至ってはその傷が埋まって、血が止まっていた。 「…どうやったんだ?」 「知るか!!」 苛立つ二人の前で、ガタガタ震えながらもブルーの右手はレッドの傷口に当てられていた。そして左手は、イエローとの間に水の膜を張り、それは壁のように部屋を分断していた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加