正義が悪に堕ちる時

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「やれ、ブルー」 だからだろうか。 一瞬の話を逸れた言葉に反応出来ず、雪奈を突然の衝撃が襲った。 それは彼女には破裂音にしか聞こえなかったが、雄馬には連続した放電音に聞こえた。 ゆっくりと雄馬が振り返ると、そこには気絶した雪奈と、それを抱える細身の見知った男がいた。 とてもそんな事をするような奴ではない筈の男が。 「…ブルー」 「……」 彼は右腕で彼女を支えながらも、左手には銀色に光るナイフを持っていた。右手には今使ったスタンガンが、彼の指に合わせて光を放つ。 スーツを着ていなければ、耐性は人間と変わらない。雪奈は確実に気絶していた。 ブルーの申し訳無さそうな視線と交錯しながら、雄馬の耳にはグリーンの声が届いた。 「卑怯な物言いだな、レッド」 「……仲間に人質を取らせるよりもか」 「そうだ」 グリーンは全く後ろめたさなんて無い声で、はっきりと答えた。 レッドの怒りがふつふつと燃え上がる。 「お前の力は俺達の中でも最強だ。それを意見を異にしたからといって振りかざされたら、俺達に適う目なんてないだろう」 「お前達二人でなら勝てるだろう」 「はっ、よく言うよ。あんただけは次元が違う。見ろ、お前に6発入れられる間に、俺はあんたに一撃どころか攻撃すらさせて貰えなかった。人質でも取らなきゃ、あんたの相手にすらならないんだよ」 「俺の27発を止めただろ。その間にイエローが打てば、俺は食らう。雪奈を離して正々堂々俺を倒せ!!」 「はぁ~…」 二人の間に冷たい溜め息が落ちた。 それは言い争っている二人の物ではなく、横に立っていたイエローの物だった。 「正々堂々とかさ、…全然悪じゃねぇよ。リーダー」 初動から緩慢に、イエローは宙を舞って右足を振り上げた。 あれは上段蹴…。 「避けるなよ?恋人が死ぬぞ」 はっ、と雄馬は視界に思わず雪奈の姿を捉えてしまった。 その体が金縛りのように硬直した瞬間、彼の頭を強い衝撃が襲い、その体が吹き飛んだ。
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