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腐っても世界最強の力を緩慢に奮って、イエローは静かに着地した。
やけに長い滞空時間の後に。
彼は壁を破壊して隣の部屋に転がったレッドではなく、そこに立って茫然としているグリーンを見ていた。
「甘いよ、グリーン。向こうが悪だと名乗る以上、会話に意味なんてないよ」
「あ、あぁ」
イエローは曖昧な返事をするグリーンから視線を外すと、壁から這い出て来るレッドを見やる。
今更ながら、その顔を黄色いフルフェイスのマスクが覆った。
「スピードだけならリーダーにも勝てるけど、まぁいいや。面倒だし。リーダー、あんたも面倒な駆け引きはしたくないだろ?だから、」
言葉の途中でイエローは走り出す。さっきまで命令していた、ブルーに標準を合わせながら。
「…へぇ」
一瞬の時の後、イエローは自分の腕がブルーの額に届かなかった事を知った。
鋭く突いた右手は、ブルーの眉間の数cm手間で止まっている。予定ではそのまま、もう30cm先まで腕は伸びている筈だったのに。
「流石はリーダー、間に合うとは思わなかったよ」
イエローは腕を引いた。
ズポッ、と嫌な水っぽい音がして、イエローの右腕は赤く染まって帰って来た。
レッドの左胸の下を通って。
腕を抜いても、まだ辛うじてレッドは倒れずにそこに立っていた。
「ぜはっ……ぜはっ…」
どこかおかしい呼吸をしながら、それでも強い目でイエローの事を睨んでいる。イエローはそれを鼻で笑った。
「は。確かに。内蔵だって無事じゃない筈なのにこうして敵を見据える姿は、とてもじゃないけど受け入れ難いね。気味が悪い程だ」
段々と、崩れるように背の低くなっていく嘗てのリーダーを見下ろしつつ、イエローは答えのいらない会話をニヤニヤと笑いながら続ける。
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