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イエローは、はっとして、中腰に膝をついてレッドを守るように立つブルーを睨み付けた。
「……!お前…僕の電気を…!」
「………!…!?あ、…水は…電気を流すから…一部……止血に…回して」
動転しているのか言葉もあやふやなブルーだったが、確かにレッドの血は止まっていた。止まっているに止まらない程に。
「人間の……構成…、は、ほぼ水…から……!補充しながら……電気で溶解して…また熱で…、応急処置位…だけど…」
こんな、あわあわと言葉すら定まらない男に出来るとは思えない程精密な作業の筈だが、実際にレッドの傷口は埋まっている。
防御しつつその一部を利用することなんて、イエローにもグリーンにも、レッドにすら出来ない芸当だ。
「…ふぅん。まぁ、今までずっと僕らのバックアップだったお前らしいか。水の能力による敵の攪乱とか僕らの治療とか回復とか技の援助とか、そんなんばっかやってたもんな」
イエローの後ろからグリーンが話しながら近づいてきた。
その言葉にイエローはふと考える。何かが気になった。
しかしグリーンは、悠長にブルーに話し掛けながら近付いてくる。
イエローはなぜか、彼を止めた方が良い気がしていた。
……なぜ?と自問しながら。
「だがブルー、そんな死にかけの傷口埋めたからなんだ?さっきのイエローの攻撃で、リーダーはもう戦えないんだよ」
その通りの筈だ。
だがイエローの頭は何かに気づいている。なんだ?何を忘れている?
「お前がイエローの攻撃を黒焦げに成るだけで済んだのは、電気に対して相性が良かったからだ。俺が後一発攻撃するだけで、リーダーはもう死――」
「!!止めろ!グリーン!!」
イエローの中で答えが出た瞬間、グリーンの喉に下から突き刺さる猛烈なストレートが、波動を撒き散らしながら炸裂した。
グリーンは言った。
ブルーには治療と回復が出来ると。あまりに精密な作業に、傷口を埋める事で精一杯だったと判断したのは早計だったとイエローは知った。
ブルーはイエローの必殺技を止めながら、レッドの治療と共に再び戦える程にまで回復させていた。
グリーンが天井にぶつかって跳ね返り、墜落するのも忘れて、イエローは眼前の光景に目を奪われていた。
漆黒のヒーローが、立ち上がった。
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