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バギギ。首を鳴らす。
バギバギ。指の鳴らす。
驚く程の好調さに、最早ブラックとなったレッドは舌を巻いていた。
さっき体を貫かれ、倒れていた時の倦怠感が、嘘のように消えている。
向かいに立つイエローと、その向こうでタフにも立ち上がるグリーンを見やり、彼は笑った。
「恐怖、愕然、狼狽。二人とも、悪のような顔だな」
彼はなぜだか、ワクワクと心を弾ませる何かを感じていた。
昔感じた…、そう、まるで始めて悪の組織と向き合った時のような。
自分が正義の中に居る感じ。
向かい合ってその顔に驚愕を浮かべる二人を見ながら、やっと理解出来た気がした。
「さっきの言葉、訂正しよう。…俺が間違っていた、という奴だ」
「あ?」
怪訝にこちらを見る二人の姿に、その認識の正しさを確信する。
始めからきっと、そうゆう事だったのだろう。
「君らは正義じゃない。俺も正義じゃない。それを認められなかっただけだ」
「あぁ!?俺達は正――」
「正義は自分が逃げる為に、人を殺したりしない。もっと命を尊重する筈だ」
「時には必要な犠牲も有るだろう。適わない程の理不尽な、お前のような悪が出た時とかな」
グリーンの言葉に、思わずふっと、笑いが零れた。
“正義は必ず勝つ!!”
最初、それは違う意味を持っていた言葉だったのを思い出す。
「正義が勝つのは強いからじゃない。諦めないからだ。
それを忘れて力に胡座をかいて、慢心の上で“正義”という誇りと驕りに酔った我々三人は、とうの昔に正義では無かったようだ」
正義に相応しいのは、正義という自分の立場を慎んで受けれる人間だ。その力と葛藤し、自分自身の弱さと戦える者だけだ。
「だから我々はもうクビだ。正義に相応しくない。少なくとも、仲間を本気で殺そうとした我々はな。恐らく、この中で一番正義の味方に相応しいのは、ブルーだな」
「…成程、そりゃあ正義も潰える訳だ」
イエローの声が、再び部屋の温度を冷たくした。
「能書きに意味は無い。個人の主張に正当性はない。歴史を後生に伝えるのは、常に勝者だ」
その手が再び光を湛え始め、彼の足が一歩ずつ近付いてくる。
.. ...
「“正義”として、貴様を排除する!」
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