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イエローの走りは戦隊最速で、それは常人だけでなく仲間ですら目で追うのも難しい。
ただ一瞬のバリッという放電音を残して、その場所から忽然と消える彼は常に先陣を切っていた。
だからこそ、レッドが振り抜いたキックはイエローの胸にめり込んでいた。
どこから来るかなんて関係ない。消えた瞬間に、彼は敵の背後を取りたがる。
「たまには正面から、」
ミリミリ、という音がイエローの体をくの字に折り曲げながら、レッドの踵の裏側に衝撃を蓄積し、
「掛かってこい!!」
レッドの足を離れた瞬間に、空気を切り裂いて弾かれて飛んだ。磁力が反発するかのように、エネルギーが全てイエローに移った。
「その口上が卑怯だと言うんだよ!!」
振り返ると、さっきから何度も攻撃を食らっているグリーンが、紫の靄を放ちながら鈍く光る両手をフロアの床に突き刺していた。
そこから一瞬で地面が膨れ上がり、表面を破壊しながらうねる大木の根が、津波となってレッドに襲いかかる。
しかし彼はその瞬間は、イエローを蹴ったまま片足で立っていた。
避けられない攻撃がレッドを襲う。
「フォレスト・レジスタンス!!」
反逆の暴徒となった、太い神木のような根がレッドを飲み込んだ。
それは捻れながらレッドが動けないように締め上げていく。
「…くっ」
「そのまま捕まえておけよ」
見えないどころか首も動かせないレッドの耳に、再びイエローの声が聞こえてきた。
やはり不意打ちの一発だけでは、大して効かなかったらしい。
「…はぁ、仕方無い」
レッドは溜め息を吐こうとして、肺がほとんど膨らまない事に辟易してから、呟いた。
「…炎神全開…」
「雷神ingストーム!!」
自分の体に触れる木々の全てが、恐怖に逃げ惑うように、さー…っと引いていくのを感じながら、レッドはその矛先をイエローの必殺技の叫び声に向けた。
「ベル・ファイア!!」
炎熱を身にまとい、灼熱を噴き出しながら業火の拳をイエローの腹部に打ち込んだレッドに、正義のスーツが焼き切れる感触が伝わってきた。
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