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………………………
ボボボッ…。
最後に尾を引くように拳から出た炎を消して、レッドはブルーと彼の抱える雪奈の方に振り返った。
流れる煙の中で彼のスーツは消え、そこに立っているのはすす汚れた綺麗な顔立ちのサラリーマン。
彼はブルーの前に立ち、しゃがんで雪奈を持ち上げた。
「ブルー、行こう」
「……」
ブルーの居たところには、不安気に彼を見上げる細身の男性が座っていた。
「…拓也、…行こう」
「……本当に、良かったの?」
雄馬は聞かれた事の意味を悟ると、逡巡を顔に浮かべて、顔を背けた。
「この中に…“良かった”結末に行かせられた人は居ないよ…」
「でも、…君の正義にも反する結末だろう?」
拓也の心配する言葉に、雄馬は少し顔を柔らかくした。
その顔が、優しい笑顔に変わる。
「やっぱり、お前が一番“正義”だと思うよ」
呟くように雄馬は言うと、階段に向かって歩き始めた。
その背中は、もう二度と見ることは無いだろう。
直感で感じた拓也は思わず立ち上がって、階段を下りようとする彼に言った。
「こ、これからどうするの!?」
「………。自分の守りたい物を守る。世界は俺には重すぎる」
歩みを止める事無く、彼は答えながら拓也の視界から消えていった。
小さくなっていく足音を聞きながら、拓也は一人呟いた。
「……僕は…どうしよう?」
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