正義が悪に堕ちる時

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「あなたは今まで、沢山の人を助けてきたじゃない」 励ます言葉も、彼の脳にまで届いているか分からない。たった1mの距離に向かい合って立つ彼が、とても遠く感じた。 「何があったの」 「……」 彼は二、三度躊躇してから、忌々しそうに口火を切った。 「君も聞いただろ。さっきのグリーンとイエローの会話」 「…ああ……。まぁ、確かにね…」 雪奈の頭に、まだ明るかった夕暮れ時の二人の会話がフラッシュバックする。 今日の昼頃にもまた出動があり、戻ってきた後の会話だ。 二人は倒した敵の数を、楽しげに競い合っていた。 「確かにあの会話は正義の味方としてはどうかと思う所は有るわ。だけど正義の味方としての働きの上では、二人共間違った事は何もしていない。悪を倒して市民を守っている」 「それは悪が居るからだ。倒すべき相手として、丁度良い相手が居るから言える事だ」 彼は汚らわしい物について話す時のように、口を不味そうに曲げた。 彼の言いたい事は分かる。だが、その先にどうすれば正しさへと向かえるかは、恐らく彼にも分かっていない。
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