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たった10分そこらで到着したのは、なんて事はないビル群の一角だった。
立ち並ぶ窓だらけのオフィスと往来する車は、東京ならどこにでもある風景の一部だ。
但しその5階建ての建物からは、都会の喧騒にも負けない騒音と時々飛び散るガラスが、他の建物とは明らかに一線を画していた。
砕けるガラスから逃げるように遠巻きに眺める野次馬を掻き分け、二人は視線を浴びながら会社の扉を潜った。
後ろで既にガラスの砕け散った窓枠が地面に当たる音にも振り返らず、中に入る。
そこは戦場の過ぎ去った荒野のようだった。
いつも戦っている悪の手先達が、地面に重なり合って倒れている。呻き声を上げる彼らの中には、無傷の者は居なかった。
大抵の者には、拳か足形がめり込むように刻まれている。
未だに鳴り止まない騒音は、いくつか上の階だ。
二人は扉を開けたまま止まって動かないエレベーターを一瞥してから、横の階段を上がり始めた。
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