正義が悪に堕ちる時

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「グリーン、そいつは最後に何か言ったか?」 後ろに立っている雪奈でも、その声に何か得も言われぬ感情が詰まっているのを感じられた。 怒りや嫌悪感のような何かが…。 しかし、グリーンはそれを感じ取れない陽気な声を返してきた。 「一丁前に命乞いしてきたが、こいつの罪を考えれば聞く理由は無いだろう?生かしておけばまた人々を苦しめる。あぁ、一応気絶で留めてるぞ?後はあんたに任せる」 グリーンは男を此方に放ってきた。 ドザッ、という鈍い音と共に、男は力無くその顔と投げ出した腕を雄馬に向けた。 雄馬は男を暫く見下ろし、そして顔を上げた。 「そうか」 「ああ。これで俺達の名声はまた上がる」 「…そうか」 「よく考えれば簡単な事だったぜ。戦闘員の一人に発信機を付けたらアジトが分かるのは当然だよな」 「……そうか」 雄馬の声が段々冷たくなっていく。きっと顔も、悪を倒した喜びを浮かべては居ないだろう。 「ときにグリーン、イエローはどうした?」 「よんだか?」 突然の声に雪奈は飛び上がりそうになったが、雄馬は静かに振り返っただけだった。 そこにはイエローが返り血を幾らか浴びて立っていた。 左手に人を掴んで。 「やっと見つけた。全く、こんなミニビルに地下施設が有るなんて誰が想像出来るかっての」 イエローは二人の横を通り、鬱陶しそうに持っていた男を悪のリーダーの横に転がした。 白衣を着た薄汚い細身の男性だ。 「戦闘員を地下で培養してた。無尽蔵の戦闘員の親はこいつだな」 雪奈は頭では理解していた。 その目の前の床で転がっている二人は、悪のトップの二人であり、多くの人を悩ませてきた張本人だ。 しかし、同時に心は得てして逆の感情を溢れさせていた。 それはグリーンとイエローに対する不快感。 そして雪奈より、雄馬の方が熱い人間だという事を、雪奈は忘れていた。
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