苦悩と決断の先に

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「はい。やはり肉体的疲労と精神的ストレスが重なり、体調を崩している者が続出しております」 「そんなに酷いのか?」 「はっ・・・一部の乗客に嘔吐、発熱を繰り返して脱水症状を起こしかけている者、精神的ストレスで自暴自棄になっている者が出ている状況です」 「・・・そうか」 副官は極めて事務的に報告する。続けて、 「既にタリア星系以降での解放に遅れる事は彼女らの知る所です。それによる精神的ショックで更に健康状態が悪化する懸念があるとの事です」 軍医の先々の見立てを聴かされ、レナートは憮然とした表情に変わる。副官の極めて事務的な口調がまるで咎めているように感じられたからだ。 「・・・そうならない為に格納庫内へ出る事を許可し、入浴時間を更に設けるのだ。我々が確実に連邦領に戻るには人質はいた方が良い。それは本艦の誰もが理解している筈だ」 「ええ、小官もそう思います」 副官は無表情で答える。
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