2612人が本棚に入れています
本棚に追加
ひょっこり現れては祐樹を元気付けてくれる存在、それが菜々だ。でも今の祐樹には必要ない。
「菜々か……なんでもねぇって……」
この悩みについては相談する気はない。巻き込みたくないのだ。これは信じてもらえるもらえない以前の話。
菜々とは幼稚園の頃からの付き合いで、だいたい何でも話せる相手だ。でも、自分でも気付かないぐらい密かに思いを寄せている祐樹としては危険な感じのするこの一件は打ち明ける気になれない。
(怪し……100パー何か隠してる………)
だが付き合いが長いのは菜々も同じ。怪しいと感じたからには探りを入れずにはいられない。
「今日遅刻だったね、祐樹。何かあったの?」
ひとまず話易い話題を振り、優しく問掛ける。
「あー……ただの寝坊だって」
「え?祐樹っていつも寝坊じゃないの?」
「バーカ。いつもは計算してギリギリ学校に間に合うように起きてんの。今日は4、5分起きるのが遅れたんだよ」
(じゃなくて二度寝でしょ)
菜々はズバリ祐樹の今朝の真実を見抜いていた。
「まっ、私にとってはいつも通ーりの祐樹の時間でも遅刻同然だと思うけどっ」
そう言い残すと、菜々は再びとことこと祐樹の元から離れていった。
どうやら菜々の中で疑問となっていた事は今の会話で解決したらしい。
(テンション変わるほど悩みでもないみたいだしっ)
いつも通り話てくれた祐樹に安心して菜々は探りを止めたのだ。余計な詮索は不要。それほどの仲だからである。
(やっとどっか行ったか……)
だが祐樹の悩みは菜々が思っている程軽くはないようだった。
最初のコメントを投稿しよう!