崩れゆく平穏

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その日の午後はどんな授業をしていたか、休み時間に友達と何を話していたか等、全くと言っていいほど覚えていない。 祐樹は午前中から続く空腹と昼休みから続く悩みとで、体力的にも精神的にもへとへとだった。 (や……やっと帰れる……) 6時間あった授業が終わり、明日の予定やその他もろもろの連絡事項を告げる先生の話が終わり、今、生徒達には放課後という名のフリーの時間が訪れていた。 机で死んだように伏していた祐樹もやっと顔を上げ、ある人物を探し始める。 帰り道は、小学校からの付き合いで、お互いの家もかなり近いご近所さん同士の友人、水野 将徳(みずの まさのり)と一緒だ。 彼を探すべく、祐樹はあまり首を動かさず、必要最低限の動きでクラス中を見回していた。 早々と部活へ向かう者、廊下で立ち話を始める者、先生を呼び、教科書を開いて勉強を開始する者、様々な人物が見られるが、肝心の将徳の姿は見当たらない。 すると突然、祐樹の頭部に小さなダメージ。一瞬の痛みとその感覚からデコピンを真上から落とされたと悟る。 「…………いでぇ」 「さっさと帰るぞ、なまけもの」 デコピンを祐樹にヒットさせたのは、祐樹が探していた張本人、将徳であった。
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