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そうこうしながらと歩いている内に景色も変わり、学校と家との間にある唯一の交差点まで辿り着いた。そして交差点を確認すると自然と目に入ってくるのが信号機。ちょうど今、青信号が点滅している。
「お!祐樹、渡るぞ!走れ!」
将徳は言いながら、既に走り出していた。いつも以上に疲れている祐樹に気づいていないのか、それともそんな事知らんぷりでただ早く帰りたいだけなのか、将徳の走る速さは祐樹に合わせる気など全く伺えないものだった。
祐樹は返事を返さず、前の将徳に続いて走りだす。といっても速さは全くもって平凡。これが今の祐樹には限界なのか、将徳との差はどんどん開いていく。
(くっそ……信号ぐらい待ちゃいいじゃん……!)
そう思いながらもあえて口には出さなかった。
「ほいっ、セーフ!」
将徳が信号を渡り終えた場所で声を上げると同時に体の向きを方向転換させる。息は全く上がっていない。ガードレールに腰掛け、余裕の表情で祐樹を待つ。
祐樹はというと、疲れている、というより、機嫌が悪い、といった表情で将徳を睨みながら走っていた。
(うーん……信号ぐらい待ってやりゃよかったかな……)
渡り終えてしまってから後悔が押し寄せる。
(あー……このスピードなら渡れないこともなさそうだな……)
この時の二人の思考は見事に一致していた。祐樹も将徳を恨みながらも歩く気はなさそうでただ走り続ける。
そしてやっと祐樹も信号に踏み込んだ。そして信号は点滅を開始しているが、祐樹は走るのを止めて歩き始めた。
そんな時、一台の小型トラックが曲がって来た。
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