プロローグ

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「ヤッべー!久びさに遅刻するっ!」 扉を開くと正に今起きたところだと一目で分かるような状態である祐樹が制服を引っ張り出して、着替えているところであった。 母はもうため息をつくしかなかない。 「あんたはいつも遅刻しそうでしょうが!もっとお姉ちゃんを見習いなさい!」 そして母はそう祐樹を叱った。姉は何かと優秀であった為に母は祐樹に対してよく「見習いなさい」等と言って比較しているのだった。 だが祐樹には反省してる余裕なんてまるでない。頭の中では、今母が何を話していたのか、という事も曖昧にしか思い出せないほど焦っているからだ。 「はいはい、じゃ!」 母の短く効果の薄そうな説教を適当にごまかし、祐樹は慌てて階段を掛け下りていく。 そして玄関で靴に足を突っ込みながら、まだ祐樹の部屋の前で呆れた表情をしている母に一言叫んだ。 「行ってきまーす!!」 そんな祐樹の後ろ姿を母は二階、祐樹の部屋の前から小さく手を振って見送っていた。「祐樹ー。お弁当忘れてるよー」とはあえて言わずに…… 平穏な日常だった。 そしてこの時はまだ誰一人として知る者はいなかった。 祐樹の中に眠る、これからの未来を大きく変えてしまう『力』を目覚めてしまう事を……
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