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場所は通学路
制服を着た一人の中学生が、ゆっくりと朝の散歩を満喫している老人を、最寄りの駅へと自転車を走らせる高校生を、その他様々な朝の時をのんびりと過ごしている人達を追い抜き、とにかく走っている。
(今日は一定スピードで走ってたら100パー遅刻だな……イチかバチか全力で走れるとこまで走ってみるか!)
走っているのは勿論の事だが、祐樹であった。いつもと同じ道をいつもとは違う、少し遅れた時刻に走っている。
そして今、祐樹は走るスピードを少し上げた。いつも登校の際に追い抜かしていく周りの人達の姿を見ないからか、焦りは募る。
いつもは見ない人を追い抜いていく。祐樹はその度に視線を向けられていた。だが、周りからの視線など気にもとめない。周りからの視線を集めてしまうのはもう慣れているからだ。毎日ダッシュで学校に向かっているのだからこれくらい祐樹にとっては当たり前だとも思っている。
(間に合え!間に合え!間に合え!)
だが、今日はちょっと違った。もう学校に間に合うことしか頭にないのだ。
そんなこんなで祐樹は4、5分ひたすら走った。
そして今、通学路を歩いている。
「…………結局、遅刻とか」
大きな祐樹のため息の後ろでは、目の前に見える中学校から聞こえるチャイムが鳴り響いていた。
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