崩れゆく平穏

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だが祐樹はわかっていた。ここでしっかりと黒板だけでも見ておかなければ、授業中、ずっと先生からのチラ見攻撃を受け続けることを。 そのため視線だけは黒板に固定する。 (…………わけわかめ) どうでもいいギャグを心の奥でつぶやき、授業を理解しようと思いはしないが、焦りだけはしっかりと感じとっていた祐樹であった。 『キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン』 チャイムと同時に動き出す生徒。そして何故か授業の片付けまで済ませて、生徒よりも早く職員室へと向かっていった先生。 学校は昼休みとなり明るい雰囲気で包まれた。生徒達は机を合わせて弁当を広げたり、財布を手に学食へと向かったり、学校全体が動いていた。 そして、あれから残りの30分間もの間、理解不能な英語を聞きながらもなんとか耐え切った祐樹も周りの生徒同様、昼食の準備を始めようとしていた。 祐樹の昼食はいつも弁当だ。だがしかし、ここで重要な事に気付かされる。 (えー?マジですかー、瀬田さぁん……弁当忘れるとかよぉ……) 鞄の中にはいつもあるはずの弁当がなかった。おそらく今もまだリビングのテーブルの上にあるのだろう。 (…………ばか) 朝ごはんを食べていなかった祐樹は腹ペコであった。 そして祐樹は改めて寝坊したことを後悔したのだった。
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