あの日、腫れた顔

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妹以外の女性に危害を加えられたのは初めての事だ。 「な、なんなん!?」 「なんなん、と、ちゃうわ!」 「えっ、訳わからん」 「なんで分からんねん、アホ!」 いや、本当に分からない。 私は彼女に叩かれる謂われはない。 全く持って理不尽極まりないのだが、そう抗議したところで、今の彼女には通ずるとは思えない。平手の第二波に襲われるのが落ちだろう。 だから、沈黙を守った。 何も反応しなくなった私に何を感じたのか、彼女は、一人呆然として痛む頬を押さえる私を残し教室を後にした。 その顔はどこか満足げで、涼やかでさえあった。 嵐の去った教室内は唐突に騒然となる。 無論、私の噂話で持ちきりなのである。 かの万谷さんと私が付き合っていて、痴話喧嘩があったのだとみるのが大方の見解のようだった。 ハズレである。
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